電気駆動システムの増加と空気圧駆動システムの減少は、電源にどのような影響を与えるか?
空気圧駆動システムから電気駆動システムへの移行が進みつつあることは、業界では周知の事実です。しかし、特に近年、このトピックは大きな盛り上がりを見せています。これは、コスト削減への圧力が継続的に高まっていることと、CO2排出量削減への要求がますます厳しくなっていることが原因です。どちらの領域でも、電気ソリューションの方が効果的です。このブログ記事では、自動車業界のOEMの例を挙げながら、スマートな産業用電源が空気圧駆動システムから電気駆動システムへの移行をどのようにサポートしているかを説明します。
電気駆動システムと空気圧駆動システムには、それぞれ長所と短所があります。
空気圧駆動システムは、比較的安価で、操作がしやすく、過負荷への高い耐性を提供し、温度変化や粉塵の増加などの環境条件にも耐えることができます。しかし、空気圧駆動システムは、中央で連続的に圧縮空気を生成する必要があり、これには多大な労力が求められます。工場全体で、一貫した圧力を分配して維持する必要があります。システムに漏れがあって圧縮空気が失われた場合には、その箇所を迅速に特定して修理する必要がありますが、その際には大変なメンテナンス作業が求められます。
特に、スイッチングサイクルの多い用途では、効率が悪いと、稼働中に多大なエネルギー損失が発生します。最新の圧縮空気システムでも、エネルギーの大半は廃熱という形で失われます。さらに、圧縮空気システムは常に使用可能な状態(つまり稼働中)でなければならないため、エネルギー消費量が大きくなります。その結果、一般に運用コストとCO2排出量が膨れ上がります。
電気駆動システムは、サーボモーターを組み合わせれば、エネルギー効率が向上し、高速かつ高精度での動作が可能になります。マイクロプロセッサの統合により、ほとんどの電気部品は機能の範囲が広がり、中央監視システムと接続してアプリケーションデータにアクセスできるようになりました。一般に運用コストは低く、CO2排出量も持続的に削減できます。さらに、工場内でも電力をほぼ損失なく簡単に分配することができます。電力を変換して蓄電できることも利点の一つです。また、ワイヤレス給電などの新しい技術も登場しています。電気式ソリューションは騒音も大幅に低減するため、作業員にとっての騒音公害も軽減されます。
しかし、電気駆動システムは購入価格が高くなりがちです。さらに、空気圧式ソリューションと比較すると、システムがより複雑で、既存の機器に改造を加えなければならない場合もあります。
OEMは通常、従来の実績あるシステムに変更を加えたがらないものです。しかし、エネルギー効率に関する経済的・政治的・社会的圧力の高まりを受け、ますます多くのメーカーが、純粋な電気式ソリューションを選ぶようになっています。そのため、新しい産業プラントの建設時には、空気圧システムを設置する仕組み自体を最初から省略するケースも増えてきました。今までの歴史と同様、この点においては自動車業界とそのサプライヤーが、先駆的な役割を担っています。プルスがこの分野で手がけてきた空気圧式から電気式への切り替えプロジェクトの多くに共通するポイントは、適切な電力供給システムが成功のために不可欠だということです。
コンベアシステムの分散型電源
自動車業界では、大型のボディ部品や重いエンジンから専用倉庫にある小型部品に至るまでのあらゆるパーツが、数キロメートルにわたるベルトコンベアや無人搬送システムで運搬されています。ドイツのレーゲンスブルクにあるBMWの工場では、組み立てラインだけで全長5.5kmにもなります。
コンベアシステムのストッパー、ダイバータ、昇降・回転ユニットを空気圧式から電気式に変換する場合は、分散型の保護機能付き電源が理想的です。これを実現するには、十分な予備電力を持つ省スペース型の強力な電源を現場に直接設置する必要があります。これにより、損失が発生しやすい長距離の供給ラインをなくし、柔軟性を高めることができます。
プルスは、この目的のために「フィールド電源」という製品カテゴリーを開発しました。保護等級IP54、IP65、IP67の高度な保護機能を備えた360Wおよび600Wの電源のほか、各種コネクタを取り揃えています。
また、最大4つの電流リミッタ出力の統合などの追加的な機能により、電気機器の利用者の安全性を確保します。さらに、eFuseが電源に組み込まれているため、制御キャビネットの外側での選択的な電力分配、保護、および監視を実現することが可能になります。
フィールド電源は、機械的にも電気的にも非常に堅牢で、湿気、ほこり、振動などの過酷な環境条件に対しても高い耐性を持っています。
ダイナミックな動作シーケンス用の十分な予備電力
自動車業界のコボット(協働ロボット)、小型ロボット、分散型アプリケーションにおいても、電気駆動システムが第一の選択肢となっています。
それは、電気モーターの技術が大幅に進歩したおかげでもあります。そのために、近年では、電気駆動システムが空気圧駆動システムの現実的な代替ソリューションとなりつつあります。電気モーターは、小型で軽量ながら、大きな出力を生み出します。しかし、例えばロボット用途などにおいて、電気モーターによる高速動作を実現するためには、高い負荷に短期的に対応できるだけでなく、その結果として発生する回生エネルギーをも処理できる電源が必要となります。
プルスの多くの電源には豊富な予備電力があり、これは「BonusPower」と呼ばれています。実績のあるDIMENSION製品ファミリーでは、多くのDINレール電源が最大150%の電力を4秒間供給できます。FIEPOSのフィールド電源も、BonusPowerにより、200%の電力を5秒間供給できます。現在開発中のDINレールマウント用の製品ファミリーは、ピーク性能とダイナミクスの点で、これらの値をさらに上回るでしょう。
豊富な予備電力により、電源の大型化が不要となり、結果的にコストとスペースの削減につながります。
無人搬送車および移動ロボットのワイヤレス充電
損失が発生しやすい空気圧駆動システムは、無人搬送車(AGV)や産業用トラックではますます使われなくなっています。その代わりに、メーカー各社はここでも電気式ソリューションを利用しており、これらはモバイルアプリケーションにも適しています。しかし、稼働中に効率的な電力供給やバッテリー充電を行うためには、まず工場内で適切な充電インフラを整備する必要があります。
すでに複数の大手自動車メーカーが、プルスの事業部門Wiferionの革新的なワイヤレス充電技術をAGVやコボットの充電に採用しています。
Wiferionの非接触充電技術により、これらの機械車両は充電による中断や手動での介入なしに連続的に稼働し続けることが可能になります。ワイヤレス充電は、機械的な摩耗を減らし、ケーブルや接触ストリップのために作業員がつまずく危険性をなくす等の形で、従来の充電システムに比べて多くの利点があります。
WiferionのetaLINKおよびCWシステムを導入すれば、AGVや移動ロボットは、ステーションでの短時間の停止中などの通常の作業サイクル中に、効率的かつ自律的に充電を行うことができます。充電にかかる長時間のダウンタイムをなくすことで、機械車両の稼働率が大幅に向上します。電力供給は充電パッドを介して直接行われます。充電できる位置の許容範囲が大きいため、1秒以内に充電プロセスを開始できます。
実績ある3kWのシステムと新しい1kWのシステムにより、Wiferionの技術は現在市場をリードしています。メンテナンス不要のソリューションにより、機械車両の効率性と運用上の安全性が大幅に向上します。そのため、自動車業界や物流業界などの過酷な環境において、年中無休の連続使用が求められる際に最適です。
アプリケーションデータによるシステム可用性の向上
システムのダウンタイムは、1分ごとに多大なコストを発生させます。そのため、自動車業界のOEM各社は、機械やコンベアシステムのいわゆるダウンタイムを最小限に抑えるよう努力しています。
空気圧駆動システムでは、圧縮空気システムに漏れが発生するリスクがあり、その場合は漏れ箇所を特定しなければなりません。その点、電気駆動システムは、制御や予防保全の観点から管理がしやすいと言えます。
プルスは、IO-LinkやEtherCATなどの各種通信インターフェースを備えた電源や、ディスプレイ一体型の電源を提供しています。これにより、アプリケーションデータや電源機能に簡単に素早くアクセスできます。
機械メーカーやオペレーターは、この電源データに基づき、効率性と生産性の面で、機械のさらなる最適化を実現できます。EtherCAT(例:CP10.241-ETCやCP20.241-ETC)は、リアルタイムのデータ伝送を行えるため、複雑なシステムの監視、記録、遠隔制御に最適です。
電源データは、リアルタイムの制御ループ内では特に有用です。オペレーターは、駆動システムやその他の多大なエネルギーを消費する機器を最適な形で制御することにより、変動する電力需要を現在使用中の給電システムの能力の範囲内に収められるようになります。こうした電源の最適な利用により、システムの効率性を高めることができます。特に、電源装置を他のシステムコンポーネントと組み合わせて利用すれば、これまで頻繁にダウンタイムや場合によっては機器の損傷につながっていた予期せぬ動作条件にも、自動的に対応できるようになります。
例えば、この電源は、出力電流、つまり負荷電流の正確な測定を実施できます。これらの高精度なサンプル値を利用すれば、デジタル負荷プロファイルを認識して記述することが可能になります。
こうした出力電流に関する情報に基づいて、オペレーターは、電気モーターなどの特定の負荷が長期的にどのように変化するかを判断しやすくなります。このような変化は摩耗の兆候を示している可能性があります。摩耗の場合は、負荷プロファイルで正弦波が認められるようになります。コンピューターを利用したデータ分析は、こうした異常を早期に検出して報告するために役立ちます。このようにすれば、故障やシステムのダウンタイムが発生する前に、摩耗した部品を交換しやすくなります。
年中無休での稼働の効率化とCO2の削減
電気駆動システムの導入は、効率性とCO2のバランスを改善するための手段の一つにすぎません。電源自体も効率化できれば、このプロセスに役立ちます。電源の効率が高ければ高いほど、電力損失が少なくなり、エネルギーの無駄遣いも減ります。プルスは、その電源製品により、96%以上の効率化を達成しています。
この値の重要性を示す計算の例を以下に示します。効率が96.4%(例:SP960.241-Sを使用)の場合は、3.6%の損失が発生します。960Wの出力に対応した電源の場合、電力損失は34.5Wとなり、これは熱として環境に放出されます。
また、思考実験により、パーセント単位の効率差がどれほど大きな意味を持つかも示しましょう。もし効率を92%に下げると、損失は76.8Wに増加し、これは2倍以上の値です。
これを工場内の電源の総数で掛けて、追加で必要となる冷却用のエネルギーも考慮すると、CO2のバランスに大きな影響が生じます。電源の効率が高ければ高いほど、エネルギーの無駄が少なくなり、その結果、CO2排出量も削減されます。
まとめ:空気圧駆動システムから電気駆動システムへの効率的な移行
コスト削減への圧力の高まりとCO2削減要件の厳格化により、業界では空気圧駆動システムから電気駆動システムへの移行が進んでいます。電気駆動システムは、購入費用が高く、設置が複雑ですが、エネルギー効率の向上と運用コストの抑制を図れます。特に自動車業界では、強力な電源を利用した分散型の電源供給により、柔軟性が向上し、エネルギー損失を最小限に抑えられることが明らかになっています。プルスは、適切な産業用電源ソリューションにより、空気圧駆動システムから電気駆動システムへの移行をサポートします。これは、CO2排出量の削減に役立つだけでなく、企業の経済の観点からも理にかなっています。