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MTBF(平均故障間隔)から分かること

電源
基本
Mtbf
Reliability
System Availability

MTBFはデバイスやシステムコンポーネントの信頼性を示す指標です。このブログ記事では、MTBFの正確な意味、MTBFが電源の重要な品質指標である理由、そしてMTBFと耐用年数の違いを取り上げます。

MTBFという用語は各種機器のデータシートによく登場しますが、混乱を招くことが少なくありません。MTBFはさまざまな算出方法があり、また耐用年数と混同されやすいことが、その主な原因です。プルスの研究開発部門では、多くの専門家がMTBFと耐用年数の改善に取り組んでいます。この知識をもとに、本ブログ記事で詳しくご説明します。

MTBFとは何か

MTBFは、「Mean Time Between Failures(平均故障間隔)」の略語です。MTBFの値は電子機器や部品、システムの信頼性を測るための指標と見なされています。

ユーザーにとっては、故障から次の故障までの統計的な平均間隔と言えます。もちろん、メーカーは故障数をできるだけ低減するように努めていますが、機器というものはどうしても一定の確率で故障するものです。そこで、機器を保守する上では、MTBFという指標を理解しておくことが特に重要になります。

MTBFの算出方法

MTBFは故障率λ(ラムダ)の逆数です。故障率λとは、一定数の機器を一定期間稼働させた場合に、統計的に予想される故障数を指しています。単位時間当たりの故障数で表すため、λは非常に小さな数値になります。

一方、時間数で表すMTBFのほうが実務で使いやすいため、信頼性を示す一般的な指標として普及しています。

故障率とMTBFの関係を、計算式の例で説明しましょう。

ある工場で同一の機器1,000台を2,000時間稼働させると、稼働時間は合計200万時間となります。この間に4台の機器が故障した場合、故障率λは次のように算出されます。

故障率λを算出する。

故障率の逆数であるMTBFは、次の式で算出します。

MTBFは故障率λ(ラムダ)の逆数です。

なお、故障率もMTBFも故障に関する統計的指標であるため、稼働の開始時から算出の対象になります。

MTBFを可視化する方法

MTBFを可視化した有名なグラフが、いわゆるバスタブ曲線(図1)です。

MTBFでは、初期故障期(フェーズA)について考慮されていません。初期不良は、通常、顧客への納入前にメーカーの社内品質検査において検出するものです。

偶発故障期(フェーズB)では、機器の温度が高いほど故障に至るプロセスが加速します。機器が高温になり、熱ストレスにさらされると故障率が高まるのです。そのため、システム開発者や保守の専門家は、故障率をできるだけ低減させるため、使用環境や機器の温度を下げる努力を重ねています。

なお、摩耗故障期(フェーズC)はMTBFに含まれません。耐用年数に相当するフェーズ(経年劣化による故障が発生しない期間)のみを対象とするからです。

バスタブ曲線はMTBFを可視化したグラフ

図1:バスタブ曲線はMTBFを可視化したグラフ

故障率λの具体的な算出方法

故障率λは、さまざまな方法で算出することができます。使用する算出方法によって、それぞれ結果が異なります。そのため、製品のデータシートに記載されている故障率やMTBFの値を確認する際は、仕様や前提となる稼働条件を必ず参照してください。

DINレール電源 の例で、2パターンの計算方法を見てみましょう。

「部品点数法」では、λを非常に簡単に算出できます。電源ユニット全体の故障率は、「電源ユニットの部品数」に「平均故障率」を掛けて算出します。ただし、この方法では正確な数値は得られません。

これよりはるかに複雑な方法になりますが、部品毎に故障率を算出することもできます。この方法では、各部品の電力負荷を計算し、熱ストレスを測定して求めます。その値をもとに、ソフトウェアで部品毎の故障率を算出します。プルスでは、主にこの手順を採用しています。

故障率の計算には、さまざまな規格を適用できます。MIL-HDBK-217F(信頼性の予測方法を定めた米軍のハンドブック)は世界中で広く採用されています。しかし、この軍用規格に基づいて算出した故障率はやや旧式と見なされています。IEC 61709に準じたシーメンスのSN 29500規格で定められた計算方法で算出した値のほうが実用的です。

各部品の故障率を合算すれば、電源ユニットの総故障率λが求められます。総故障率λが得られたら、前述した方法で電源ユニットのMTBFを算出できます。

豆知識

MTBF値には、前提となる規格や稼働条件が必ず明記されていなければなりません。特に、負荷条件と稼働環境の周囲温度が重要な要素となります。各メーカー製品を比較する場合は、必ずこうした値を確認し、必要に応じてメーカーに問い合わせてください。

プルスの製品データシートでは、MTBFに関するあらゆる情報を提供しています。

MTBFと耐用年数の違い

データシートに記載された耐用年数は、稼働中の故障に関する統計的な数値ではありません。耐用年数とは、機器が摩耗によって使用できなくなるまでの期間を指しています。

電源ユニットでは、特に電解コンデンサに注意を払う必要があります。電解コンデンサは経年劣化によって電解液が蒸散し、静電容量が低下するため、機器の耐用年数を左右するものとなります。

そこで、電解コンデンサのメーカーは製品データシートに製品寿命を明記しています。この点で、静電容量や内部抵抗などの重要な指標が初期値からある程度逸脱します。

電解コンデンサは 高温 に弱い部品でもあります。温度が10度上昇するごとに、電解コンデンサの耐用年数が2分の1になるため、電源ユニット全体の耐用年数に直接的な影響を与えます。

電源のMTBFと耐用年数が重要な理由

産業用電源は稼働開始時点から信頼性を確保し、長年にわたって確実に給電する必要があります。従って、MTBFと耐用年数はどちらも、電源ユニットの重要な品質指標であり、高水準でなければなりません。

プルスでは、電源の信頼性と耐用年数を特に重視してきました。MTBF値と耐用年数を機器データシートに詳しく記載し、さまざまな稼働条件も明記しています。

このような信頼性の高い指標は、多数のコンポーネントによる複雑なシステムを計画・実現する上で非常に有用な情報となります。

また、信頼性や耐久性に優れた電源は 地球環境 にも優しい製品です。電源ユニットの交換頻度が減るため、資源の保全や電子廃棄物の削減につながります。